MakeCameraSpaceTrajectry

maxスクリプト久々に書いた・・。
カメラ視点からのオブジェクトの軌跡を作成するスクリプトです。

3D空間ではなくカメラ視点で動きを確認したい時に使います。
スプラインなので動きの編集は出来ません。

標準のmotion pathは3D座標の軌跡なので、
カメラワークがついた時に画面上でどう動いて見えるのか、分かりづらかったりします。
こちらはカメラに連動して、オブジェクトを画面から見た時の軌跡を作成します。

リグの部位などを指定して、
指先の動きとか顔の動きのアーク確認とかに使ってみてください。

9/25
実行時point3エラーが出るのを修正しやした

↓DL
MakeCameraSpaceTrajectry_0.21

はやくAIに仕事奪ってほしい派のスタンス 2021

AIが何度目かの流行になり、それはそれで素晴らしく
四方山話なら楽しいのですが、
CGの仕事で実際に寄ってくるとなると真面目に説明していくのに手間がかかり
個人的に一応ちゃんと言語化しておこうと思ったのでここらでひと記事。

基礎概念みたいなところなので、
真面目にきちんと技術を掘ってる方の参考にはなりません。
もしくは1ユーザーの所感としてお取りください。

結論として言いたいのは
「妙なAI案件とかポンコツ変換に騙されてないでちゃんと技術を積み重ねようよ」
です。
自分は文系の数学ド素人だけど、最低限のリテラシーは積んでおけば、
上手く使って建設的に技術を積み重ねられるはず・・という文です。

どこから書こう・・


●----機械学習
まず前提として、昨今のAIと呼ばれるものは主にディープラーニング(機械学習)の隆盛です。
機械学習のおおまかな概観についてはてきとうに調べてください。

もっと先の汎用AIについては機械学習じゃなく新しい世代じゃないと無理なんじゃないすかどうですか。
結局フレーム問題すっ飛ばして文脈の理解できないし。

この世代を早く通り越して1段汎用化が進んだAIに仕事を奪ってほしい。
私もAIとマルバツゲームで人類の存亡をかけた戦いがしたいです。(映画ウォー・ゲーム並感)


現状では機械学習とその組み合わせで何ができるか、
という所で考えた方が良いでしょう。
(まずここまでは共通認識にしたい。タイトルみたいな夢想はあくまで四方山話にしたい。)


--以下恨み節
・・ていうかAI以前に大多数はスクリプトレベルのツール開発がちゃんとできるかなー?
という段階だし、
ITには乗り遅れちゃったけどDXって言いなおしてあげるから、
もう一回チャレンジできるドン!コロナでリモートもつけておくのねん!
という所で大抵が留まってるのでAIの心配もクソもないと思います。
早くデジタル化しやがれください。
AIどうこうの話ですらない。
ちゃんと技術を積み上げられたし。
--以上恨み節


●----自分のスタンス
AIという言葉に対しては
「AIにもいろんなレベルがあって広い意味では家電の自動温度調節機能もAIだよね」
という、原作版攻殻機動隊にもある立ち位置です。
(あれも元々は新しい"ファジー機能"が家電AIとして隆盛した時期の文言だと思うのですが、今となってはローレベルでもAIだよ、っていう広範囲さを意味する形に主文脈が変化している感じがありますね)
なんというか、
その時代における便利な最先端自動判断機能がAIと呼ばれますね。

なので個人的には、真面目な話で「AI」って言ってるのはマーケティングだったり認識が曖昧な人だから気にしなくていいよ派です。
私的には便利な判別法として使っております。
四方山話ならべつに何でもいいんですが。SFだったら設定ちゃんと詰められてるし。


●----CGでの応用
上記で書いたように以前から(機械学習ではない)自動変換AIとして売られていたソフトもあり、
例えば画風の自動変換や自動生成ツール等は既に仕事でも使っているのですが、
逆に未成熟なAIソフトに釣られて一段質の落ちた作品も出てきており
そっちの方が「アイエーー」となる感じです。個人的には。
中世に戻っとるやんけ。
せっかくコントロールと知見が積み重なってきたところを。

結局きちんとした仕事として必要になるのは各部のコントロールなので、一発変換は一発芸にしかなりません。
AI以外の各種処理型ツールでも一緒ですね。
範囲指定やパラメーターでの強弱、補間の安定性、意味(重要度)の補助。
「細いアホ毛が消えたらキャラ変わってまうやんけー!」
的なやつです。
特にアニメとか髪型だけでキャラ判別するからね。仕方ないね。
「アホ毛is重要」とキャラデザインの文脈を自動認識させる事ができたなら、きっと一段AIの汎用性が進化するのでしょう。
現状ではそれは無理なのでレイヤーなりマスキングなり別オブジェクト機能なりで人間が認識補助する必要があります。
文脈ガン無視一発変換じゃどうしようもならんのです。

趣味で遊ぶぐらいなら手軽で良いのですが。



●----今後期待しているもの
自動変換や生成それ自体の質は上がってきている。
しかし機械学習の仕様上、
ラインと塗りの分けができなかったり、コントロールが不可能な物がほとんどなので
あくまで「とりあえず変換して上手くいったら使えるかも」という状態で
仕事用の道具としてはむしろ劣化している、という認識です。

そのため、上にも書いたようなコントロールがきちんとできる仕組みが必要。
機械学習をベースに、コントローラブルな何かがのってきたらちゃんと検証しよう、
それまでは個人的にはあんま時間使わんとこ、と思っています。
たとえばPhotoshopが変換フィルター積んできてるので、Photoshop本体のマスク機能やブラシ/レイヤーと連携してアルファ付きで部分適用できるような形とか、
nVidiaのブラシ指定型生成のようなものとか。


もしかしたら機械学習の上に機械学習を重ねて各要素をレイヤーに切り分けるような手法になるかもしれませんね。

画像の色を切り分けるSoft Color Segmentation技術と
Nukeのcopycatを使用して、実写の各色を切り分ける手法も出てきました。
Live action AOVs: Disney Soft Segmentation via CopyCat in Nuke
もちろん現状でもきちんと実用化している機能もあり素晴らしいです。 自分も今はAI系デノイズや多少のスケーリングは便利に使っています。 デノイズはディティール補間が独特でそれだけでもある種のスタイライズフィルターになるため、 ものによってはNPR表現と相性が良いですね。 逆にディティールを潰し過ぎる事もあるので、こちらも使い分けかなと。 方向性としては 意味の類推はさせず、あくまで高機能な統計補完として使用するのが相性いいかなぁ、 と思っておりまs。 (キャラクター学習させるよりもスパイダーバースみたいに線の補間に絞るとかの方が) ---- 雑な追記 2021年のこの頃はgoogleとかも 「AIの倫理問題など含め色々な物が解決されるまで、研究はするけどリリースはしません」 的なスタンスだったので、その後のまともな開発進行とリリースを期待していたのですが、 数年したらまぁ色んな面でなりふり構わずクソみたいな状況になりまして。 そんなもん真っ当に使えるわけないだろうが、大前提として権利関係きっちりしろや。 現状でAI画像使ってる輩なぞ転売屋以下のクズだろうが。 というスタンスになっております。

DUNEとストーリーの圧縮構造

DUNE、砂の惑星みた。2021年版。

ちなみに原作もリンチ版も未視聴で、ホドロフスキーのデューンだけ見てる(今回気付いたんですがあれってDUNE本編の内容にほとんど触れてないんですね・・)
という偏った知識です。

まず映像めちゃくちゃよかった。
映画館で見て。

・・・。
すみません映像面の凄さは「映画館で見るために作りこまれた映画館で体感するべきクオリティ」のアレなんで仔細には書くつもりが無いため概観だけ・・

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ライティング/構図。特に今の世代だからこそ表現が熟成され可能になった、CGの煙を存分に使い煙やフォグを前提にした構図、絵作りや演出の多用。
多弾頭ミサイル、バリア、ビーム、オーニソプター、戦艦破壊など、
アニメ等にもよく観られる古典的表現を現在先端技術でゴリゴリのクオリティで描画。
単なる一本の「市街地ビーム攻撃」だけでも表現が一段引き上げられちゃって
CG屋としてどうしましょう(歓喜
という感じです。これが新しいスタンダードかぁ、とおもた。
(VFXを担当したDNEG社の表示にエンドロールでわざわざ1画面分空けてあるところに貢献度と監督がいかに重要視してるかがみてとれます)
色んなものをひっくるめて"世界観"としてド正面から素晴らしく描き切っていて、
人によってはこれが初代のスターウォーズやブレードランナーでぶっ飛ばされたような、
映画世界の原体験になりうる。
そんな作品だと思いました。

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ほんで、今回かいておきたかったのは感想ググってたらあんまり見られなかったストーリー面について。
パート1で大筋はけっこう王道なんですが、特にラストの決闘の意味とひねりについて。
原作の凄さもあるのですが、構造的に監督の以前の作品「メッセージ」の一歩先を行っているのです。

まず、主人公には予知能力があり、
中盤で砂嵐に巻き込まれた際には、予知した「未来の友人」との会話を参考に、風の流れに乗ることで危機を脱します。
この「未来でしか知らない情報で現在を書き換える」というのは、「メッセージ」でもあった一種のループ構造ですね。



で、この予知は劇中何度か丁寧に出てきまして、
「これは第二部につながるんだなぁ。けど、かなり丁寧に描いていてこのまま2部で再度つながっても、冗長になってしまわない?」と思ったのですが・・

なんと最後の決闘で対決するのは、このアドバイスをしてくれたはずの「未来の友人」なわけです。
命を救った「流れに乗れ」という場面も、ピッケル的な道具を持っていた所からしてサンドワームの乗り方を教わる場面だったのでしょう。
そこまで親密になって、砂漠での生き方を教わるであろう友人。
それを殺してしまう。

ポールがあの表情を浮かべていたのも、いずれ友人になれたであろう者への哀悼なわけですね。
(この流れを読み取らないと、ただの小物っぽい中ボスを倒しただけに見える)

ここで、今まで描写していた予知がすべて意味を変えます。
まず友人との関係は消滅。命を救ったはずの会話をする未来も今はない。(ここが私的に一歩進んだと思ったポイント。役立てたはずの未来すら消してしまう)
他の様々な描写も「ほぼ確定的だった未来」から、「未確定の未来の一つ」になる。
なんとなく想像していた「第二部はこうなるのかなぁ」という想像はすべてミスリードでリセット。
どの予知が正しいのか、全て曖昧になる。
恐れていた聖戦も、避けられないものではなく、ありうる一つの未来になった。
言ってみれば、ターミネーター2で未来が不確定になった後。暗闇の高速道路エンドなんですね。
聖戦はポールにとって恐るべき終末戦争なのでしょう。

この多重構造を1本で成立させる凄さ。メッセージを経たからこそ、とも思えます。
ありえたであろう2部の友人や垣間見る聖戦の辺り含めて、言ってみれば1.5本分ぐらいのストーリーが圧縮された構造になってる。
乱暴に言うと、この1作だけでも成立できる。
シンプルに見せつつ凄く高度。

未だに次作が確定していない(ほぼ作られそうな雰囲気だけどスタジオのゴーサインはまだ出ていない)ので、
監督としても「最悪次作が作れず、これ1作だけになった場合でも、最低限1本で成立できるつくりにする」という形にしたのかなと。
いやーすごいわーー。

私的にビジュアル面でもストーリーでもすごい作品でした。
キャラ、ストーリー、世界観という3本柱があるんですが、
世界観にガン振りしたように見せつつ他もめっちゃレベル高い。(男爵の地獄の黙示録感とか細かいとこ挙げてくときりがない)

ぜひ、劇場で。

シンエヴァと、創作者と一つのはしか

シンエヴァンゲリオンを見た感想なんですが、
「自伝は創作者の麻疹」だと思ったんですよ。(また極端な感想ですが)
罹患率が高く、後年になるほど重症化し、できるだけ早いうちに罹患して免疫をつけたほうが対処もしやすい。

もちろんエッセイだったり、島本漫画のように作風として持っていく人も居るし、創作は常に何らかの作者人生の反映になっているので、
テーマそれ自体は良いものです。
しかしその扱いにはある一線があり、
例えば長い作品の途中から中途半端に第四の壁を超えたり、
キャラクターに急に別ベクトルの思想を埋め込むと、たいてい宜しくないことになる。

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半ば余談として、自伝アニメーションの一側面について。

ICAFという、日本の専門/大学を対象にした学生アニメーション上映会がありまして、
毎年のように趣味で全国の学生作品を見ていると、
卒業制作/修了制作においてMVに並ぶ一つのジャンルと言えるほどに、自分をテーマにした作品が多く作られているのがわかります。
繰り返しますが、それ自体は良いことだと思っています。
自己表現は創作の大切なファクターですから。
しかし概観すると、そういうテーマの作品がとてもとても多い。

ある美大では、2-3年次ぐらいに「自分の歴史をテーマにした短編アニメーション」を作るのを課題としている所もあります。
個人的な考えですが、これはある種の予防接種のようなものかなと考えています。
2-3年次に一度作っておいて、この誰もが惹かれうるテーマに対する免疫をつけておく。
そのまま同様のテーマで研ぎ澄ました卒業制作に進むもよし、
これで課題達成して、別のテーマに進むもよし。といったような。

実は、自分も学生時代にそういう類の作品を作ったことがあるのですが、ぶっちゃけ「こういうのは早めに作っておこう」という目論見もありました。
こういうものは一度早めに作っておかないと尾を引きそうだ、という予感があったので。

これはあくまで個人的な意見ですが、
自分自身をテーマにした作品、もし何か心にたまるものがあるような場合、
何か壮大なプロジェクトの前に、短編でも何でも、早めに一度出しておくのが良いのだろうと思っています。
軽くても一度。
その後さらに研ぎ澄ませたり深化するのも良いけれど、
しかし年を経ると中々に厄介、そんなテーマのひとつな気がしています。

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もしかしたらこんな感想を抱くのも、そういったアニメーション作品を見てきて、ある種の自伝メタネタに慣れしてしまったせいなのかもしれません。

そこで振り返って考えると、宮崎監督は流石だなあ、と思ったのでした。
「風立ちぬ」もアニメーション制作や創作行為に対して、ある種メタ的な自伝めいた側面を持っているのですが、
きちんと物語やキャラクターを選び、暗喩をかぶせ、創作論のテーマ(ピラミッドのある世界)をサイドに置きつつ、一貫した物語として成立させている。
きちんと作品として整理されている。

シンエヴァの方はあまり言うのもなんですが、一時代を築いた暗喩や内省的な作品の総本山としては、自伝的なメタネタの扱いが薄皮を被せているもののかなり直接的で、挿入が安直に感じたのでした。「鬱からの回復」「エヴァ乗らない方がよかったわ」「オトシマエ」「ゲンドウのピアノ」など。
今回は特にメタ的な迷いがそのままストーリーの不整合や流れのちぐはぐさにも直接影響してしまっているように感じており、劇場の帰り道に思い返して個人的にテンション下がったのは「オトシマエをつける」で、
結局監督側も、先へ進むという気概はもうなくなって、一度始めてしまったものを似たようなところにわかりやすく着地させるという、オトシマエに終わってしまったんだな、と、正直に言って失望したのでした。
この内容にきちんとしたスタッフを長年付き合わせるという勿体なさも頭をよぎりましたが、まあそれは別件。ストーリー/構成がグズってるなあ、という印象。


あまり比べるのもよろしくないのでしょうが、
自分は最近のシリーズのリブートで言うと、「アネモネ」の方がきちんと割り切って世界観を先に進めつつ、作者のメタ感も織り交ぜつつで面白かったです。
最新作「エウレカ」はまた"少女の終わり、少女の始まり"として、エヴァがとりあえず付けたオトシマエとしての"少女の終わり"より、テーマ的にその先へと進んでいるような気がするので
こちらも勝手に期待しています。

お祭りなのであまり水を差したくなかったのですが、自分の中ではきちんとまとめておきたかったので、ちょうど風立ちぬが話題になったこの時期に。

閃光のハサウェイ

映画、閃光のハサウェイが良かった。

「映画を作るのだ。少し予算に色のついたTVの延長線やOVAのイベント上映ではなく、映画を作るのだ」というのが全体を通じて感じられた。
いや自嘲も込みなんですが、上映されるアニメ作品の中できちんとした映画作品ってぶっちゃけ何割ぐらい?と思(お通夜の念仏を夜通し唱えることになるので略

劇中何度も「映画を見ている」という感覚になったし、この感覚は実写でも少ないのでほんとうにありがたい事なのですが、
この映画的なものを構成する要素は何なのか少し復習も兼ねて列挙したい。

構成、構図、タイミング、色、音あたりで雑多に。


構成

まず冒頭のシャトルからして色々と凄い。2001年宇宙の旅などを踏まえた上で、小物を含めた近未来の宇宙旅行の演出や、引き画で長回しの大気圏突入(個人的には近年最高の大気圏突入シーケンスはプロメテウスだと思ってるのですが、あの引き画の俯瞰長回しはちょっとオマージュしてるのかも、と好みに引っ張られて妄想した)、
また座席のちょっとした視点移動の3D使いなど、構成や手法が高級感にあふれてる。
正直この冒頭を予告で見て「映画館行かなきゃ」と思った。いや行ってよかった。

全体でも押井守作品のダレ場のような街中散歩のシーケンスがあったり、作中のテンションの上下と人物の演技を合わせていたり(戦闘が終わった後のギギのあくびとか)、映画の流れが意識されてて良い。(この辺り原作の取捨選択や再構成の上手さだと思う)

それと全体的に、観客に対する信頼度が高めなのが良かった。
シャトル襲撃で敵が拳銃を落とすのを目立たせるけど、拾う所は見せない。
場面変わって次のシーンではもう銃を持ってる、とか。
人質解放する時も、ズームウィンドウの中で味方の射線を遮って射撃を止めさせるとか。
もう一段セリフなりカットを割って説明しそうな所を、見ればわかるように描いてる。よき・・。

自分は原作未読だったので、ストーリーもハサウェイの立ち位置が暴露していく流れで構成されてて良かったと思う。
それと、ジンジャエールなかなか飲めない、というのも意識的な構成ですよね。



構図

自分も常々気を付けていることなんですが、
映画とTVとモバイルなどでは「適合する構図」が異なる。
画面の小さいモバイルでは寄りの画が見易くなり、引きの細かい構図や風景の臨場感は味わえない。
逆に映画の大画面では、引きの風景や遠くにある情景描写であったり、主題となる人物等を小さく描いたりする事で、世界観への没入度を高める事ができる。
ただし、精細な画面描写のカロリーはとても高く、大変になる。
個人的に良い映画は引きの画が上手いとすら思ってる。

ハサウェイでは様々なシーンで引きの画や高密度な背景、遠景での状況描写が多く、映画的な構図や画面設計がだいぶ意識されていたように思う。
夜の市街地の戦闘では遠景の街や迎撃ミサイルの点描、長いPANで別区域の目標ビルを描いたり、背にした市街地に流れ弾で被害が出る様子も精細に描く。
また地上では人物が逃げ回り、手前の小さな人物の後景で巨大な力が暴れ回る構図をとる。
ほんとうに大変。でもこれが見たかったんです。めっちゃ最高。

あとリムジンとエレベーターで、顔を寄せてささやく演技がとってもよかった。



タイミング

様々なカットでアニメの平均よりも尺が長めで、情景や戦闘での遠景を捉えるカット事が多かったように思う。
もちろん長回しの分カロリーも増えるけど、確実に映画としての質が上がる。
恐ろしいのは押井監督のようにFIX多用の長尺というよりも、CGや実写に近いような、対象を追いかけてゆく長めのタイミングや構成が多い事。
長めの尺でありつつも長いPANを重ねて、周囲の状況を描いたり、コクピット内の視点移動だったり。
いやあ大変。しかしすばらしい。。。

それと今回の長回しの中で私的に好きなカットの一つは、
途中立ち寄る島の全景を、道路に沿って流して見せるカット。
本編ではそれほど重要ではない島で、
普通のアニメならまずやらない高コストのカメラマップ系カットを、やる。
凄い。
例えば市街地の高級ホテルのビルは戦略目標なので、きちんと3Dで起こすのもストーリーに見合って意味が大きい。
けれど、あんな島を3DBGで流して見せるなんて普通アニメではやらない。
それでも自分はあのカットで、確かに「映画としての情景描写」を感じられた。
最初何秒かは「よくやるなー」と思ってたものが「あ、これは映画のカットだ・・」と認識が変わったし、もし自分だったらこのカットを入れる発想も出なかったであろう事を反省した。
意味はあった。いろんな面で映画として、あのようにきちんと世界観を見せるという事を積み重ねてる。



色

これはもう見りゃわかるんだけど色も良い。
特に、きちんと暗いところを暗く落とす勇気。設計の上手さ。
薄明の中でビームが閃く戦闘も、閃光のハサウェイという題とも通じて良かった。
この辺りはもうカットごとに分析したい。めちゃくちゃ良い。
撮処理とか見ながら書いてったら多分2記事以上書き連ねる。
本来一番長くなりそうなのに短めでさーせん・・
煉獄さんみたいに1カット毎に「うまい。うまい。」って言ってると思う。



音

特にコクピット回りの警告音やガンダムの推進音。
市街地侵入シーンの、雲を跨いで上昇するカットで感じたけれど、(あれはジェット機映画の名作、ナイトオブザスカイのオマージュだと思ってます)
今回の空中戦、特にコクピットや海上シーンのガンダムの扱いなどは、
だいぶ戦闘機に近いものとして演出されてますね。

この飛行シーンをめちゃくちゃ盛り立てているのが大量の計器類のSE(今までのガンダムのお約束サウンドをあえて避け、戦闘妖精雪風のような系譜に寄せてると思う)だったり、ガンダムの独特な飛行音だったり。UIも良かったねえ。

たぶん、初の自立飛行型でミサイル持ちというガンダムの機体設定や、
どう見てもアクション向きではないデザインから「空中戦は戦闘機に近しく扱おう」と導いた演出の方向性だと思うんだけど、
戦闘距離が遠めになったり(人質解放の時もズームウィンドウで見ているとか)、近接アクションが少なめなのがリアリティの向上にものすごくプラスだった。
場合によっては地味と言われるかもしれないけど自分はこっちもめっちゃ好きだし、作品としてはこれが良かった。
ハサウェイという作品のリアリティラインでは、超機動で空間に軌跡を描きながら飛び交うよりも、戦闘機のような空間戦闘が合ってる。
たぶん、そこを超えたら文字通り地に足がつかなくなるというか、超兵器過ぎて映画としての質感を壊してしまうだろうし。

あ、あと劇伴もそうなんだけど、節々でノーラン監督作品意識してますよね。
アニメでノーランやるとか狂気の沙汰だと思うのでとりあえず敬礼したい。
まあノーラン監督も押井監督や今敏監督のアニメ要素オマージュしてるし、そこからさらにアニメに戻ってきて、やはり表現は行ったり来たり様々な積み重ねなんだなあと思た。

たぶん細かい部分を見れば見るほど色々出てきそうな作品なんだけど大まかにこれぐらいで。
あとは、現場が平和だったことを祈る。最近これは外せない。